

四季を通じて美しい錦秋湖
豊富な温泉資源と美しい景観に恵まれた湯田温泉峡。 9カ所の温泉場があるほか、全国でも珍しい温泉付きの駅舎、 洞窟風呂、砂風呂など、ユニークな温泉施設が点在しています。 雪に包まれる冬には伝統的なお祭りやイベントが目白押しで、 温泉と雪国文化が楽しめます。
岩手県の西部、奥羽山脈のふところに位置する湯田温泉峡。昨年11月1日、合併により誕生した西和賀町の旧・湯田町内に点在する、9つの温泉地の総称です。
湯田は雄大な自然に囲まれ、古くから温泉や鉱山で栄えてきました。町内は南北に北上川最大の支流・和賀川が流れ、ダム湖の錦秋湖に注いでいます。この湖は、秋の紅葉の美しさからその名が付けられたもので、ダム水源地環境整備センターのダム湖百選にも選ばれています。
温泉峡の中心にあるのが、「湯本温泉」。和賀川の清流沿いに旅館が建ち並び、江戸時代に狩人によって発見されたと伝えられています。
また、明治の文豪・正岡子規が逗留し、句を残していることでも有名です。明治26年、子規は秋田県六郷町から山越えをして湯田町に入り、湯本温泉に投宿。『はてしらずの記』に「ここは湯田という温泉場なり」と記し、句を詠みました。
湯本温泉の泉質はナトリウム・硫酸塩・塩化物泉。切り傷、やけど、慢性皮膚病などに効果があります。
湯本温泉の南に位置する「湯川温泉」は、文字通り湯が川のように山峡を流れていたと伝えられています。古くからの温泉で、湯治場としてにぎわってきました。
出途の湯、中の湯、奥の湯と湯量豊富な3つの湯があり、各地から訪れる湯治客は、ここで交流を深め、情報を交換したといいます。多くの旅館は今も自炊兼用で、ひなびた風情が漂っています。
泉質は湯本温泉と同じ。出途の湯には体育センターがあり、奥の湯から3kmのところには、天然記念物の浮島があります。
国道107号線の岩手と秋田の県境の高地に位置するのは、「巣郷温泉」です。昭和42年、国が実施したボーリング調査の結果、温泉が湧出。当時は農作業で疲れた住民がからだを癒していましたが、一時期サラブレッドの医療、保養にも活用されたこともありました。
交通が便利なところにあり、眺めも格別です。目印は「鹿島様」と呼ばれる悪霊退治の人形です。
泉質は単純硫黄泉で、慢性皮膚病、慢性婦人病などに効果があります。
「湯田薬師温泉」は、自然林に囲まれた比較的新しい静かな温泉場です。温泉とともに森林浴も楽しめます。昔、薬師様がたてまつられていたと言われ、お年寄りの湯治や憩いの場として人気です。
泉質は、ナトリウム・カルシウム・硫酸塩・塩化物泉で、切り傷、やけど、慢性皮膚病などに効果があります。
左草温泉・長峰の湯は、平成5年に温泉ボーリングで湧き出た温泉です。このほか、大沓温泉、川尻温泉、槻沢温泉、錦秋湖温泉があります。

温泉郷のシンボル「ほっとゆだ駅」

浴衣のまま温まる「砂ゆっこ」
湯田温泉峡には、多くの温泉旅館や湯治場のほかに、豊富な温泉を利用したユニークな公衆浴場があります。
JR北上線のほっとゆだ駅は、湯田温泉峡の玄関口。木の風情を活かした素朴な建物、トンガリ屋根の上の時計台、町の鳥「やまどり」を模した飾りがユニークな駅舎は、大浴場を併設しています。
川尻温泉の湯をひいた大浴場、あわ風呂、寝風呂、貸し切り風呂があり、休憩所も設置。列車を待つ間にちょっとひと風呂、あるいは途中下車して旅の疲れを癒すことができます。
東北初の珍しい砂風呂が「砂ゆっこ」。トンガリ屋根に木の壁、山あいに調和した木造の建物は、湯本温泉からほど近いところにあります。
砂ゆっこは、町内で産出される天然珪砂を、温泉のお湯で熱した砂風呂です。入浴方法は、浴衣のまま砂の中にすっぽりと埋まってからだを温めます。肩こり、神経痛、冷え性、腰痛などに効果があり、休日には県外からも多くの観光客が訪れています。
錦秋湖温泉の名物湯は、洞窟風呂「穴ゆっこ」です。この地区には昔、多くの鉱山があったところ。その坑道をイメージして洞窟風呂が作られました。洞窟の中は湯気がこもるので、スチームバスの効果もあります。
穴ゆっこには洞窟風呂のほか、露天風呂(冬期は休業)があり、そこからの錦秋湖の眺めは最高です。
旧湯田町では、豊富な温泉資源を観光だけでなく、産業の振興、町民の福祉の充実などにも活用しています。温水熱を「産業用」「民生用」に分けて利用しているのです。産業用ではスッポン養殖や花き栽培、町民の福祉では町営屋内温泉プール、床暖房などです。

幻想的な美しさの
「津田温泉峡雪あかり」

勇ましい湯之沢裸まつり

湯田名物の雪合戦大会
県内有数の豪雪地帯にある湯田温泉峡は、冬はスキー客でにぎわいます。ゲレンデがなだらかなので、初心者やファミリー向け。滑り終えたら、温泉で疲れが癒せます。
また湯田の冬の風物詩は、雪国ならではの行事・イベントです。
旧暦12月12日の夜に行われる「湯之沢裸まつり」は、山祇神社に集まった若者たちが、裸になって川に飛び込み、身を清める勇ましい祭りです。
1月19日には「白木野人形送り」が行われます。ワラ人形を先頭に太鼓を打ちながら行列し、人形を木の枝に結び付けて厄払いをするお祭りです。
2月中旬は、「湯田温泉峡雪あかり」があります。雪あかりとは、たくさんのミニかまくらを作り、その中でキャンドルを灯すものです。町の街道に情緒あふれる雪像が並び、幻想的な灯りが灯ります。
旧湯田町は雪合戦の町としても有名です。フィンランドで開催される国際雪合戦世界大会でも優勝。毎年の雪合戦大会は湯田の恒例行事として、子どもから大人まで楽しみにしています。
ほっとゆだ駅から車で約30分のところに、天然温泉の宿「沢内バーデン」があります。源泉掛け流しの大浴場をはじめ、8種類の浴槽が自慢です。
漢方生薬の湯、ハーブの湯、檜の湯、全身マッサージと美容効果のあるバイブラの湯、超音波の湯、スチーム・サウナ、ウォーター・バスのバラエティ豊かな温泉が楽しめます。
また、沢内バーデンの周辺には自然があふれており、散策路も整備されています。バーデンでは四季折々のおすすめのハイキングコースを設定し、実施しています。
月刊みんかつ 201号より
2006年2月28日 作成